始めに、「筆界」と言う言葉と「境界」と言う言葉は、一般の方々の日常生活においては区別して使われてはいませんが、表示に関する登記の専門家である土地家屋調査士はこれを区別して使い分けています。簡単に両者を区別すると、「筆界」は登記された一筆の範囲を表し、公法上の境界という言い方をします。一般的な「境界」と言う言葉の概念は所有権の及ぶ範囲を表すとされています。
「筆界」の定義
表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線を言います。筆界とは国の行政作用によって決められるものとして固有に存在するものであり、私人間で合意、変更すべき性質のものではありません。
「境界」の定義
一般的な境界と言う言葉の概念は所有権の及ぶ範囲を表すと前述しましたが、筆界(公法上の境界)の存在を無視して、当事者間で所有・占有する土地の範囲を決定しようとして立会の上で双方が合意した場合、その境界は所有権境界として当事者間に於いては法律上も有効と言えますが、その効果は当事者間にしか及びませんので、合意した境界が筆界(公法上の境界)と公差の範囲を超えて食い違っていた場合などは、その部分を分筆して筆界を所有権境界に合致するように形成し、所有権の登記をしなければ第三者には対抗要件を具備することはできません。